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特許価値評価 20のステップ [valuation]

ちょっと古い(2004年)けどAICPA(米国公認会計士協会)の雑誌 "Journal of Accountancy"に"20 Steps for Pricing a Patent"特許価値評価のための20のステップ)という記事を見つけました。

筆者は価値評価専門の会計士(CPA/ABV)でかつ特許弁護士(Patent Attorney)でもある人です。

参考のために日本語訳もつけてみました。

ステップ1の特許が実在することの確認から、ステップ20の報告書の作成まで、基本的ながら参考になることが書いてあります。

このような詳細なステップを踏んで評価されるのは薬関係の特許などかなり価値があると想定されるものに限られますが、独占による利益の最大化のところなどは参考になります。

特許が単体で価値評価の対象になる場面はまだあまり多くありませんが、今後はそういうケースも増えてくると想定されるので、今後もいろいろな手法について検討していきたいです。
実務上は、特許が事業にどのように使われているか、特許なしの場合はどうなるのか、寄与度はどの程度か、ライセンサーとライセンシーではリスク(割引率)は異なるか、売上高はどう予測するか、権利の強弱、広狭をどう反映させるか(キャッシュフロー、寄与度、ディスカウント)、代替技術による陳腐化の織込み、権利消滅後はどうなるか(それまでにブランド価値が発生していることが多い)、などなどいろいろと難しい問題がありますが、引き続き検討していきます。

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特許の価値評価が必要な場面 [valuation]

特許の価値評価については、もう随分と前から必要だ、必要だ、と言われていますが、不動産鑑定業者のような特許価値算定業者が出てきているかというとそうでもないので、まだまだ特許価値評価はビジネスとしては大きくなっていないようです。

もちろん、企業結合会計基準が変わったので、日本版のPPA(Purchase Price Allocation)が今後どんどん出てくると思いますが、これは事後的に価値を割り振るものなのでここでは考えません。

そうすると、価値評価が必要となる場面にはどんなものがあるか思いつくままに挙げてみると
  1. 他社に対する買収、合併(M&A)
  2. 一部事業の分社(スピンアウト)、一部事業の売却(スピンオフ)
  3. 他社とのJV設立(技術の現物出資)
  4. グループ内での権利移転(税務目的)
  5. ベンチャー企業への投資(出資、融資
  6. ライセンス交渉(一時金、料率)
  7. 特許権等権利の売買
  8. (例外的ですが)証券化の際の評価
  9. (例外的ですが)担保としての評価
などですかね。

こういった場合、今のところは自社内で値段を決めているのでしょうかね。
ただし、事業と共に技術(特許)が移転する場合は、事業の価値をだしてやればよいので、そういうのは会計士さんがやるのでしょう。
で結果として、知的財産自体の価値を出す必要がある場面は余り多くないので、専門の業者が立ち上がっていないことにつながっているということでしょう。


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最近の特許ロイヤルティ料率 [license]

特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書について
ちょっと前になりますが、特許庁からいくつかの調査研究報告書がでていて、その中で「(4) 知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用の在り方に関する調査研究」があります。

ここではアンケートによるロイヤルティ料率の調査結果が載っていて、これは発明協会の実施料率が古くなってしまっている今となっては、貴重なデータになるのではないでしょうか。報告書でも継続的に実施することが提言されているので、これは是非お願いしたいところです。

また、報告書では、マクロレベルの無形資産価値の評価方法として、ストックベースの手法A(株式時価総額+有利子負債−有形固定資産)とフローベースの手法B(研究開発費および広告宣伝費の過去3年分の合計額)を用いて分析しています。

日本企業については、フローでは多額の投資をしているため手法Bでは無形資産価値が大きくなり、他方で手法Aでは相対的に無形資産価値が小さくなっています。

これは、予想通りの結果なのですが、予想と異なったのはこの結果に対する解釈でした。自分ではこの結果は、企業の行っている研究開発費が利益に結びついていないため、株価には反映されず結果としてストックベースでは無形資産の価値は小さくなっている、と理解しました。

ところが、報告書(概要)では、無形資産形成のための投資が株式市場における無形資産に反映されていないことを示唆している、という書き振りになっています。
これを読むと、「株式市場が技術の価値を理解していないため株価が安くなっている」ということになります。このような理解からは、「知的資産報告書を作成し、技術やブランドの価値を体外的に説明することにより、株価を上げることができる」という話になってきます。また、同じ文脈で、技術やブランドの価値を認められれば、融資を受けられる、などの話にもなってきます。

本当でしょうか。

まだ上場していないベンチャーや新興市場の会社であれば、上記のような話もあるかもしれません。しかし、大企業では継続的に研究開発を行い、それを製品化しして販売し利益を得て、さらに研究開発を続けるというプロセスになっています。過去の研究開発が利益に結びついていれば、それば当然に株価に織り込まれるはずです。株式市場はどちらかと言えば、将来の利益に繋がりそうな材料は積極的に評価する傾向がありますので、可能性があれば株価は上がり、可能性がなくなったところで株価が下がる、という形になります。

こうした状況のもとで、過去の研究開発費がどんなに多額であっても、株価に反映されていないということは、過去の研究開発が利益に結びつくとは思われていないということだと思います。そしてそれは、過去10年、20年の実績から日本の企業の研究開発の効率の悪さが株式市場に十分理解されているということなのではないでしょうか。

本報告書は、知財関係者により作成されているため「特許、ブランドには価値がある」というところから出発しているのかもしれません。そして、その価値が十分に理解されていないことが問題だ、というトーンが感じられます。しかし、価値あるものならそこから利益が発生するはずで、遅くとも利益が得られた時点で株価には反映されるものです。
技術やブランドと利益との結びつきを解明するのは難しいのですが、苦労して作った、技術的に高度だから価値があるはず、ということは成り立たず、売れなければ価値がないということを改めて考えて見る必要があると思います。

事前の

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産業革新機構、風力発電のゼファーに10億円出資 [VC]

5月5日の日経に記事が載り、翌5月6日(今日ですね)に産業革新機構(INCJ)から正式に発表がありました。
(リリースPDF)

ゼファーというと、リーマン・ショックの2ヶ月前である2008年7月18日に民事再生法を申請したマンションデベロッパーを思い出しますが、もちろん今回のゼファーはもちろんそれとは別会社です。

今回のゼファーは1997年6月設立の小型風力発電の機器の開発、製造、販売を行っているベンチャーです。
現在の資本金は2億6千万円
となっていますが、2008年2月にそれまでの543,735千円から10,000千円に減資をしており、今回の増資は2008年6月(250,000千円)以来となります。

zephyr_capital.png
今回の10億円増資により発行される株式数が分からないので、増資後にINCJが過半数の議決権を取るのかどうかは分かりませんが、かつての産業再生機構やJALをやっている企業再生支援機構のように過半数を取って主導的に経営していくという組織ではなさそうですから、10億円は議決権のない種類株式によることになるのかもしれません。











zephyr_patent.png
次に技術ベンチャーへの投資ということで、特許を見てみました。
IPDLで検索すると、出願件数が19件、うち既に特許になっているものは8件、審査請求済が4件、拒絶査定が2件、みなし取下げが5件となっていました。

「風車」や「風車翼」といった発明があり、製品を自ら開発しているようです。
これらの特許出願や特許がどのような価値があるのかは、これらを使った装置がどの程度売れるかにかかっているのですが、売上高等の情報は公開されていないので、なんとも言えません。競合他社が真似したいものであれば、価値があるということになりますが、特許になっていても誰も真似しようとしないものは経済的には価値がないことになります。これはいわゆる「目利き」が必要という議論になってしまうのですが、現実には将来どんな技術が優位になるかは分からないことが多いので、結局いろいろやって市場に出してみるしかないということだと思います。

INCJとしては、可能性のあるベンチャーには、自分のお金を投資するという気持ちで積極的に投資を行い、成果が出なかったら税金を無駄に使ったとして避難を大いに避難され、成果がでたときにも特に褒められないという、そんな役回りで、やってもらいたいと思います。

タグ:INCJ
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次世代iPhoneは営業秘密か?

【号外】飲み屋に落ちてた次世代iPhoneを徹底解剖(その1) : ギズモード・ジャパン

昨日から一部で大きく話題となっている「飲み屋に落ちてた次世代iPhone」、もうご覧になっていると思います。
拾った人は、Appleのカスタマーセンターに電話して返そうとしたけど、(当然のことながら)門前払いとなり、結局GIZMODEが5千ドルで手に入れることになったとのこと。

さて、この魅力的なNew GadgetについてはGIZMODEの記事を読んでもらうとして、この一連の騒動でGIZMODEが違法行為をしていないか検討している記事がありました。

Has Gizmodo broken the law with its iPhone story?


中を見てみるとまず"TRADE SECRETS LAW"について検討しています。日本だと不正競争防止法の営業秘密に当たるのではないか、それを勝手に開示してしまっているのではないか、ということだと思います。

しかし、この次世代iPhoneは盗まれたものではなく、偽装されているとはいえ公衆の面前で使用されていたため、それは営業秘密には該当しないとしています。よく、変なマスクをつけた車が走っていて、それがその手の週刊誌にスクープされていますが、まあそれと同じということですね。

営業秘密として保護されるためには、それが秘密として管理されていなければならないという要件があり、これを満たしていない以上、法的に保護される利益には該当しないことになってしまいます。Apple,残念。

ところで、最初に拾った人、この人は拾った物を持ち主に返さずに売ってしまったわけで、これはもう明らかに窃盗罪になってしまいますね。カリフォルニアでも日本でも拾った物は警察に届け出ることになっています。他方、GIZMODEの方は、盗品と知っていて買った場合にはまずいですが、善意であれば特段問題はなさそうです。

なんともかわいそうなのは落としてしまったアップルの社員、もうその名前も世界的に有名になってしまいました。何でも当日は誕生日だったそうで、気持ちよくドイツビールを飲みすぎてしまったようです。

Jobsはどうするのでしょうか。このままのデザインでもう出すしかないのでしょうね。

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ビクターは原盤権を持ってないそうです [IFRS]

昨日に続いてビクターエンタテインメントの件です。


ネットで調べてみたのですが、どうやら昔のものはバーニングプロダクションが、最近のものはアミューズが原盤権を持っているらしいです。(これって調べる手段がないんですよね。)

そうすると、少なくともサザンオールスターズの原盤権については、ソフトバンクのB/Sに出てくるということはなさそうです。smapについても、きっとジャニーズ事務所が原盤権を押さえているでしょうから、こちらもなさそうです。

ですが、サザンスマップのCDを発売しているのはビクターエンタテインメントです。ということは、ビクターエンタテインメントは、原盤権を保有している事務所から複製権について許諾を受けているということになります。

そして、この許諾によってCDを販売しそれによって利益が出ているとすると、契約から生じる将来キャッシュフローがプラスである、この許諾契約に価値がある、会計的に言うと資産性が認められるということになってきます。もしかすると、ソフトバンクのB/Sに「原盤権に係る許諾契約」というのが出てくることになるのかもしれません。

ところで、日本ビクターの半期報告書(いまどき半期報告書は珍しいですね。株式は非上場ですが公募社債を発行しているそうです。
Victor_Sement.jpg
半期報告書なので、監査もレビューではありません。)でセグメント情報を見ると、エンタテインメント事業(ビクターエンタテインメントとテイチクエンタテインメントを含む)は、2009年9月期(半期)の売上高321億円に対して営業費用が323億円で2億円の営業赤字となっています。2009年3月期通期も628億円の売上高に対して営業費用が629億円で差し引き1億円の赤字となっています。ぎりぎりの営業赤字が続いているのが不思議です。売れた分だけ、同額をプロモーション費用に使ってしまう体質なのでしょうか。

エンタメ事業全体で利益が出ていないとなると、株式の取得対価をどのように各資産に配分するか、無形資産をどこまで認識するかというのは難しい作業になりそうです。親会社(ビクター・ケンウッド)としては、赤字会社なので、1円で引きとってもらってもOKなのかもしれません。そうしたら無形資産の認識は不要になりますね。

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ソフトバンクがビクターエンターテイメントを子会社化 [IFRS]

先週、ソフトバンクビクターエンタテイメントとテイチクエンタテインメントを子会社化するとのニュースがありました。サザンSMAPなどの楽曲の販売を手がけているそうです。

本件の場合には、買収によって手に入る資産は直接的には株式ですが、子会社化によってその会社が保有している全ての資産が間接的に手に入る事になります。
そのうち、有形資産としては事務所ビルやスタジオ機材があるのでしょうが、無形資産にはいわゆる原盤権がふくまれており、ソフトバンクの狙いもそちらだと思われます。

そうすると、ソフトバンクは、いくばくかの対価を支払って原盤権を手に入れるというのがこの取引に実態ということになります。

これを会計的に表現すると、ソフトバンクの連結財務諸表においては、本件取引の結果、無形資産の一種である原盤権(著作権法上は「レコード製作者の権利」)が資産として計上される、ということになります。

そうすると、問題は一体その原盤権がいくらなのか、ということになります。
本件で取得する資産、負債は原盤権だけではないので、取得する資産、負債を全てに取得原価(本件では株式の買取価格)を割り振る必要がでてきます。
これを会計の世界では、PPA(取得原価配分)と言っています。

今年の3月末までは、原盤権のような無形資産を認識することは義務ではなかったので、原盤権部分は「のれん」として処理することも可能だったのですが、4月1日以降の企業結合については、一定の条件を満たす無形資産を認識することが義務になりました。

原盤権のような法律上の権利は条件を満たす資産なので、本件買収が実現したらソフトバンクの財務諸表に「原盤権」という科目が出てくるかもしれません。


M&A 無形資産評価の実務著作権法

タグ:IFRS 原盤権
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リスクを取らないVC「産業革新機構」 [VC]

開店休業「産業革新機構」

昨年7月に設立された政府系ファンド「産業革新機構」が一向にニュースに出てこない。
東京都と一緒に水インフラを海外に売り込むことにも取り組んでいるようだが、東京都はお金があるし、そもそも民間ではないのだから対象外ではないか。

民間案件は、最近ようやくアルプス電気との案件が出てきたが、これだけだ。
(東芝と組んでやった案件は入札で負けている)


この案件では、産業革新機構は全部でたった100億円を出すだけ。それも4回に分けての投資で、最初はまず30億円とのこと。合弁会社の出資割合はアルプス電気73.9%、機構が26.1%でマイノリティ出資にとどまるので、機構に主導権はない。ということは失敗しても機構のせいにはならないということだ。

冒頭リンクの日経ビジネスの記事によると、機構はベンチャー投資を目指して設立されたのに、確実な投資案件を探しているため投資案件が出てこないらしい。そんなリターン確実な案件があれば民間で資金は集まるので、国が出てくる必要はない。国に求められているのは、民間では取れないようなリスクはあるが世界を変える可能性がある案件に大胆にお金をつけることなのではないか。

当初の構想では日本版のIntellectual Venturesを目指して、オープンイノベーション実現を目的とした「イノベーション創造機構」という名称だったはずなのに、いつの間にか大企業も出資する不思議な組織に変わってしまった。個人的には結構期待したのだが、やはり官営組織ではリスクマネーは出せないようだ。


機構の平成21年度決算見込みを財務省の資料で見てみると、なんと初年度の9ヶ月だけで35億円の損失をだしている。実際の投資案件はなしで、組織の立ち上げ、人員の採用、投資案件の調査だけで35億円を使うということだ。そして、平成22年度見込みは、売上高ゼロ、販売費及び一般管理費46億円、支払利息30億円で76億円の赤字だ。

ベンチャー投資だからすぐに利益が出ないのはやむを得ないが、投資しなければ始まらない。

世界を変えようとしているベンチャー企業に投資して欲しい。

必要なのは「規模」ではなく「センス」です。

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業種別の特許使用料 [license]

4月10日の日経新聞に特許庁が特許使用料率を調査したというニュースが出ていました。
日本で特許出願した企業・団体のうち、合計出願件数の上位約3千社を対象に2009年11月から2010年2月に調べたものです。特許庁からは今月中に発表されるそうです。

結果はなぜか業種別にまとめられていて、高い方は食品の5.5%、低い方はパルプ・紙の3.1%となっています。

しかし、ひとつの会社でも多数の実施許諾契約があり、それぞれによってライセンス料率も異なっているはずです。また、契約によって特許1件のライセンスから1,000件単位のライセンスもあるはずです。

回答する側としては特許1件当たりの料率というのは答えられないでしょうから、おそらくはライセンス契約ごとの調査なのだと思います。また、クロスライセンスは対象外なのでしょう。

ともあれ、売上高対比の料率を見ると食品、化学が5%台で他業種に比べて高い傾向はあるようです。4%台の業種はなぜかありません。料率を決めるときには3%の次は5%で4%というのは業界慣行としてあまりないのかもしれません。

特許使用料率というのは、売上高対比で決められるため3%と5%ではあまり違いがないように思えますが、利益ベースでは大きな違いがあります。仮に営業利益率が10%についてライセンスを得て生産・販売しようとすると、料率5%では営業利益の半分がもっていかれることになりますが、3%だと利益の3割にとどまります。

食品業界や化学業界の特許使用料率が相対的に高いのは、製品の利益率が高いことも理由になっているのかもしれません。そう思って低い方を見ると、電気、鉄・非鉄、パルプ・紙といかにも利益率が低そうな業種が並んでいます。

それにしても、特許料率って相場的に3%〜5%で決まっているんだなあと思いました。

実施料率―技術契約のためのデータブック

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「六甲のおいしい水」のお値段は?

アサヒ飲料株式会社による、ハウス食品株式会社のミネラルウォーター事業取得に関するお知らせ
「六甲のおいしい水」事業が53億円で売買されました。

対象事業の2009年3月期の売上高は122億円で、2008年3月期の160億円から大きく減少しており、2010年3月期も国産のミネラルウォーターは概ね前年並みとのことなので、売上高倍率でいえば0.43倍で取引されたことになります。

ハウスの発表によると、売却されるのは「製造工場・採水地(土地・建物・構築物・機械設備等)及び商標権等」とされており、商標権が対象事業に含まれることが明記されています。

他方、アサヒの発表文では「製造及び販売事業(六甲工場、灘採水場の 土地建物設備を含む)」とされていてリリース文には商標権という文字はでてきません。そのかわり、「六甲のおいしい水」をアサヒのブランドとして使用することが明記されており、ブランド力の向上を追求するとしていますので、商標権を譲り受けるのは間違いないようです。

さて、本件の会計処理ですが、売り手側のハウスでは譲渡資産の簿価は5,589百万円で売却額53億円ですから289百万円の売却損となります。発表文でも3億円の特別損失が発生するとしているので、ほぼ整合します。

問題は買い手側のアサヒの方です。「六甲のおいしい水」というのは誰でも知っている著名な商標ですからちょっと考えると大変な価値がありそうですが、ハウスに払う額が53億円で譲り受ける工場や採水場の土地建物設備だけで簿価56億円となっています。これでは商標権の値段はマイナスになってしまいます。

ここで、この4月から適用されている新しい会計基準では、譲り受けた有形固定資産に加えて商標権のような法的権利も取得資産に含めて認識し、取得対価である53億円をこれらの資産に配分することを求めています。
ちなみにいままでの会計基準では、商標権のような無形資産は「資産として認識することができる」という規定だったため、事実上、商標権等の無形資産が資産計上されることはありませんでした。

今回の事業譲渡では、工場等の有形資産はミネラルウォーター市場が厳しい競争状態にあって収益性が限られていることから譲渡前の簿価5,589百万円から相当程度の切り下げ(減損)が必要となると想定されます。

他方、商標「六甲のおいしい水」の方は日本国内において著名な商標であることは間違いなく、単独で事業と切り離した形で他のミネラルウォーター事業者にライセンスしてロイヤルティを得ることも可能(実際にはやらないでしょうが)と考えられるため、譲渡対価の53億円の一定部分は商標権に配分するのが自然ではないかと思えます。

ただし、いままでそのような形で無形資産を認識し対価を配分するという実務がなかったため、これまで通りに固定資産を53億円で買った、という会計処理になってしまうのかもしれません。

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